ジュリアスの秘密


 

 まずい…まずすぎる…。どうすればいいのだ!いや、ここは冷静になるのだ。これまでだって、幾多の困難を乗り越えてきたではないか!そうだ、まず冷静になることだ…。

 ブツブツ呟き、時折グッと拳を握り締めながら、執務室を歩き回る光の守護聖。
「あの……ジュリアス様……?」
 ノックをしても返事がなく、しかし確かに声は聞こえるので意を決して入室したオスカーは、あまりにも奇異な行動をする光の守護聖に、恐る恐る声をかけた。

 大体何が慰安だというのだ…仕事だとて、無いわけではあるまい。そうだ!私だけ残る言うのはどうだろうか!名案だ!さっそく女王陛下にお目通り願おう!

 意気揚々と扉に向かって走りだすジュリアス。果たしてそこには、呆然と立ち尽くす炎の守護聖が・・・!
「……っ!何事だ?」
 無様に床に転がりながら原因を確かめるべく、視線をめぐらす。
「オ、オスカー!?」
 同じく床にいるオスカーに両の蒼眼を見開き叫ぶ。
「申し訳ありません。お声がしましたので、返事を待たず入室しておりました。」
 先に立ちあがり、今だ半身を起こしただけのジュリアスに手を差し伸べる。
「すまぬ。しかし…」
 手を借り立ち上がりながら、ジュリアスが問う。
「何時頃からここにいたのだ?」
「そうですね…『冷静になることだ!』とか何とか仰ってらした時からですが…」
 ジュリアスの顔がみるみる蒼白になっていく。
「何かあったのですか?不肖オスカー、ジュリアス様の為ならたとえ地獄の業火に焼かれようとも・・・」

 オスカーは気づいたであろうか・・・。何を口走っていたのか、思い出せぬ。
 ジュリアスはオロオロと視線を彷徨わせる。
 一頻り気障な台詞を吐き終えたオスカーは、やっと尋常でないジュリアスの様子に目を止めた。
「ジュリアス様?いかがなされたのです?」
 オスカーが顔を覗き込もうと近づいて来る。
「オスカー!!何か用があったのではないのか?」
 サッと顔を背け、執務机の上の書類を繰りながら問い掛ける。
「あぁ、そうでした。慰安旅行の件で少しご相談が・・・」
 オスカーの言葉に、書類を繰る音が不自然に止まる。
「・・・慰安旅行・・・」
 そうなのだ、そもそも何故守護聖が聖地を放ったらかしにして、慰安旅行などできるというのだ!前例にない行動は慎まねばならん。そのように女王陛下に進言するのは、首座の務めだ!
 またもや、一人何事か呟きつつ拳を握る光の守護聖。
「あのう、ジュリアス様?」
「すまぬ!重大な用向きが出来たのだ!また後ほど聞くゆえ、出直して来てはもらえぬか?」
 その有無を言わせない言動に、オスカーはただただ首を縦に振るばかり。
 猛然と扉を開けて走り去る首座の姿を、オスカーは呆然と見送った。

 

 

 

back  menu  next