「ジュリアス?」
戸惑ったようなクラヴィスの声に慌てて手を離す。
「どうした?ん?」
クラヴィスが驚くほど近くに顔を寄せて尋ねる。
どうしたというのだろうか?ジュリアス自問する。ただ、何となく蒲団が離されるのが嫌だったのだ。 何故?何故だろう・・・ただ、蒲団の距離がそのまま二人の距離のように感じてしまったのかもしれない。離されればそのまま離れてしまうかもしれない、と。
クラヴィスの訝しげな視線を感じるが、何となく決まりが悪く顔が上げられない。
「ジュリアス?」
重ねて尋ねられる。
意を決して顔を上げ、クラヴィスの顔を見つめる。
「別に離さずとも・・・」
至近距離で瞳を合わせるのに慣れず、結局目を反らしつつ答える。
「そうか?」
クラヴィスが気遣うように声を掛けるのにもう一度視線を合わせ、小さく頷く。
「ならば良いが・・・・・・それよりも、部屋を変わるとは、どういうことだ?」
クラヴィスが再び憮然としながら問い掛けてくる。
余りにも距離が近すぎるのをどうにかしようと、ジュリアスが上体をすこし反らす。
「それは、そなたが、気分が悪いと言うから・・・」
ジュリアスがしどろもどろに答えるのを眺めつつ、クラヴィスが口を開く。
「私が気分が悪いと、何故お前が部屋を変わるというのだ?」
納得がいかないとクラヴィスが問い詰める。
「何故?ああ、リュミエールが心配してそなたの看病をしたいと言うので、その方がそなたも良いのかと思ったのだ」
リュミエールの方がそういう事にも慣れているだろうし、あのように言われては頷くしかなかった。
ジュリアスはそう思った。
「それに、私は、その、今日はそなたに、迷惑を掛け通しで、そなたの具合が悪いのに負担になりたくなかったのだ・・・」
肩を竦め、申し訳なさそうな色を浮かべる蒼の瞳にクラヴィスは苦笑する。
自分の憤りはただの誤解だと、ジュリアスが自分と同室なのを忌んで変わりたいなどと言い出したのではないと気づいた。気づいた途端に何故だか心が軽くなったように感じた。
「別にお前を迷惑には思ってはいない」
普段決して出さないような甘い声でジュリアスに微笑みかける。
はっとしたように瞳を瞠るジュリアスに、らしくない自分を確認する。
ああ、一体自分はどうしてしまったのだろうか・・・。
クラヴィスはそっと目の前でふわふわと揺れる金の髪に指をからめ梳いてやる。
実に手触りの良い髪だった。今日は何度も手を触れたように思うが、触るたびに新鮮に感じるのは何故か?離し難いと思うのは何故なのか?
クラヴィスは不思議な気持ちを抱えたままジュリアスを見つめていた。
ジュリアスもまた縛られたかのようにクラヴィスの紫の瞳を見つめていた。