クラヴィスの屋敷の裏の森から、樅の木を切り庭園に飾り付けるという案が出たのだが、それに強硬に反対したのが、クラヴィスとマルセルであった。
マルセルは木を切ることには絶対反対だという。まあ確かにあのように立派な木を切るのは些か気が引けるのは確かだ。
だが、「降誕祭」には樅の木が必要なのだ。私だとて無闇と切りたいわけではない。それにしても、何に対しても執着がなようなクラヴィスが、この件に関しては時に声を荒げるほどに、反対するのには驚いた。
皆が困惑の表情でコチラを見るが、なんともしようがないではないか。
クラヴィスを見ると、やはりあの悲しげな瞳に出会った。
何が言いたいのだ?
そのように大事なものだとは思わなかったがな。一体その木に何があるというのだ?
・・・・・・言わねば良かった。
言った瞬間のクラヴィスの顔は・・・アレは常々無表情だと思っていたが、あのような表情もあったのだ。
悲しいとも怒りとも言えぬ、もっと静かな表情であったが。
一瞬痛みが走ったように顔を顰めたが、その後はただ諦めにも似たような表情で。
とにかく、初めて見た表情であったのは確かだ。
クラヴィス、やはり私が悪いのか?
樅の木の件は、その後ルヴァの報告で王立研究院の裏手の森にもあることが分かったのだ。それを伐採せずに使うこととなった。
飾りつけは、ルヴァの監修の元無事済んだようだった。私は首座として、最後まで見届ける義務があったのだが、クラヴィスとの一件以来何にも親身になれず、殊に樅の木の事など、考えたくもないというのが本音であった。
クラヴィスは今日は出仕していないようだった。昨夜私邸のほうに使いをやったが、なんの返答も得られなかった。
一体何が・・・わからぬ。
クラヴィス・・・・24日の夜の事はどうするのだ?
そなた来るのか?
私は待っていて良いのか?
ただ、それだけで良いのだ、教えて欲しい。
私は、待っていて、良いのだろうか・・・。
私を許して欲しい。未だに何がそなたをそのように苦しめているのか分からぬ、この私を許して欲しいのだ。
・・・・・・・・・・・・・・・待っている。