晧々と燈された明かりの中、光の守護聖ジュリアスは冷め切った料理を前に頑なに座っていた。
「来ぬか・・・やはりな・・・」
自嘲するように呟く。
虚しく時計の針が真上を指す。
固く組まれた指をぎこちなく外すと立ち上がり、先ほどまで自分が座っていた場所を見やる。
まったくの茶番だ。明日これを片付ける者たちはどう思うであろう。滑稽だが、今の私には相応しい罰かも知れぬ。
ジュリアスは夜着の裾を翻し、寝室への扉を開けた。
寝台に横たわり、今日一日を知らず思い出していた。
見事に飾り付けされた樅の木は素晴らしい様だったが、ジュリアスの心には何も響いてはこなかった。
守護聖が勢ぞろいしての式典があったのだが、そこには闇の守護聖クラヴィスが欠けていた。
リュミエールの視線が突き刺さる。そのように睨まずとも、わかっている。全て私のせいなのだろう・・・。
ジュリアスは揺れる瞳を誰にも見せぬように、樅の木を見上げた。
しかし、それは、真横に佇む炎の守護聖にはすべて見られていたのだが。
「ジュリアス様」
オスカーの抑えた声が耳元で響く。飛び起きるように身体を起こすと心配げな薄氷の瞳に出会った。
「クラヴィス様はいらっしゃらなかったようですね」
「な、オスカー?何故ここに?」
寝室に突然現れたオスカーにジュリアスは混乱を来す。
「ジュリアス様・・・」
気遣わしげな声音に涙腺が緩みそうなるが、見られまいと貌を伏せた。
いつもはサークレットでキチンと留められている金色の髪が額に零れかかる。
すっとオスカーの手で額の髪が掻き上げられる。
「ジュリアス様、この炎のオスカーは何があろうとも、貴方の傍にいます」
何度も髪を撫で梳かれながら、言い聞かせるように一言一言ゆっくりと紡ぎ出される。
「オスカー・・・」
ジュリアスのいつになく力のない声に、オスカーは髪に絡めた指に僅かに力が篭る。
「クラヴィス様のせい・・・ですか?」
ジュリアスがその紺碧の瞳を揺らし、顔を上げた。
切れ長の瞳が水を湛えたように潤み揺れている。瞳の縁は紅く色づき、凄絶に艶めいていた。
「・・・ジュリアス様っ!」
苦しげな声と同時に抱きすくめられる。
「オ、スカー・・・?」
「ジュリアス様・・・俺では・・・俺では駄目ですか?」
言葉と共によりいっそう抱きしめられる。
「何を言っているのか・・・わ、分からぬ。もう・・・何が何やら・・・どうすれば良いのだ?」
呆然と呟くジュリアス。
「クラヴィスは、来ぬし・・・それは、私が悪いのかも知れぬ・・・悪いのだ・・・が・・・や、約束したのだ・・・」
自分の腕に縋りながら、それでもクラヴィスの事を想うジュリアスに、痛みを堪えるようにオスカーは強く抱きしめ直す。
「来ると・・・言ったのだ・・・今夜来ると・・・クラヴィス・・・何故・・・」
夜着を通してジュリアスの震えがオスカーに伝わる。
腕を緩め、ジュリアスと瞳を合わせると、その紺碧の瞳からついに堪えきれず泪が零れ落ちた。