「ああ、どうしたらよいのだ…。」
悄然として呟く。
壁に手をつき肩を落として歩く光の守護聖の姿に、皆一様に動揺を隠せない。
「私は…今まで築いてきた私の…くぅ…」
意味不明な言葉を呟きつつ、ついには床に膝をついたジュリアスに、慌てて女官が数人駆け寄る。
その騒ぎを聞きつけ、オスカーが執務室から飛び出してきた。
「ジュリアス様!!」
オスカーの声に、手を出しあぐねていた女官達が一斉に安心した顔つきで振り返る。
「ジュリアス様?いかがなされました?ご気分でもお悪いのですか?」
オスカーの手がジュリアスの肩に伸ばされる。
「……よい、大事無い」
力なく呟くジュリアスの声はしかし、オスカーには届かなかった。
「さ、ジュリアス様しっかり掴っていて下さい」
オスカーの言葉を理解する間もなく、視界が引き上げられる。
「な!オスカー!!」
ジュリアスを軽々と抱き上げ、颯爽と走り去るオスカーの姿に、その場に居合わせた女官が一層熱を上げたとか上げなかったとか。
一方抱き上げられたジュリアスの方は、恐慌状態に陥っていた。久しく抱き上げられることのなかった身には、オスカーの行為があまりにも無謀に感じられたのだった。
第一ジュリアスは身長が人並み以上にある。体重だってそれなりにある。振り落とされたら、と思うと恐怖に体が強張る。
「もうすぐですから、お気をしっかり持ってください!」
しかし、ジュリアスの考えを他所に、あっという間に執務室についてしまった。
「扉を開けてくれ!」
オスカーの声に内側から扉が開かれる。
顔を出した事務官が抱き上げられたジュリアスを見て、顔色を変える。
オスカーはジュリアスを抱き上げたまま、執務室の奥に向かう。
「オスカー、何もここまでせずとも、何ともないのだ」
ジュリアスの言葉に、室内の者が安堵の溜息をつく。
「ですが、顔色が悪いようですし、それに倒れられたではありませんか!」
確かに膝はついたが、倒れてはいない。ジュリアスはムキになって言い返すが、寝椅子に寝かされている身では、あまり迫力がなかった。
「とにかく、しばらく安静にしていてください」
そっと手を握られ、優しく諭されてしまった。
部屋を出て行くオスカーの姿に、いつのまにか主導権をしかり握られていたジュリアスであった。
「しかし、どうしたらよいのだ・・・」
ジュリアスの呟きは、オスカーの扉を閉める音にかき消された。