ジュリアスの秘密

3


 

「ああ、どうしたらよいのだ…。」
 悄然として呟く。
 壁に手をつき肩を落として歩く光の守護聖の姿に、皆一様に動揺を隠せない。
「私は…今まで築いてきた私の…くぅ…」
 意味不明な言葉を呟きつつ、ついには床に膝をついたジュリアスに、慌てて女官が数人駆け寄る。
 その騒ぎを聞きつけ、オスカーが執務室から飛び出してきた。
「ジュリアス様!!」
 オスカーの声に、手を出しあぐねていた女官達が一斉に安心した顔つきで振り返る。
「ジュリアス様?いかがなされました?ご気分でもお悪いのですか?」
 オスカーの手がジュリアスの肩に伸ばされる。
「……よい、大事無い」
 力なく呟くジュリアスの声はしかし、オスカーには届かなかった。
「さ、ジュリアス様しっかり掴っていて下さい」
 オスカーの言葉を理解する間もなく、視界が引き上げられる。
「な!オスカー!!」
 ジュリアスを軽々と抱き上げ、颯爽と走り去るオスカーの姿に、その場に居合わせた女官が一層熱を上げたとか上げなかったとか。


 一方抱き上げられたジュリアスの方は、恐慌状態に陥っていた。久しく抱き上げられることのなかった身には、オスカーの行為があまりにも無謀に感じられたのだった。
 第一ジュリアスは身長が人並み以上にある。体重だってそれなりにある。振り落とされたら、と思うと恐怖に体が強張る。
「もうすぐですから、お気をしっかり持ってください!」


 しかし、ジュリアスの考えを他所に、あっという間に執務室についてしまった。
「扉を開けてくれ!」
 オスカーの声に内側から扉が開かれる。
 顔を出した事務官が抱き上げられたジュリアスを見て、顔色を変える。
 オスカーはジュリアスを抱き上げたまま、執務室の奥に向かう。
「オスカー、何もここまでせずとも、何ともないのだ」
 ジュリアスの言葉に、室内の者が安堵の溜息をつく。
「ですが、顔色が悪いようですし、それに倒れられたではありませんか!」
 確かに膝はついたが、倒れてはいない。ジュリアスはムキになって言い返すが、寝椅子に寝かされている身では、あまり迫力がなかった。
「とにかく、しばらく安静にしていてください」
 そっと手を握られ、優しく諭されてしまった。


 部屋を出て行くオスカーの姿に、いつのまにか主導権をしかり握られていたジュリアスであった。


「しかし、どうしたらよいのだ・・・」
 ジュリアスの呟きは、オスカーの扉を閉める音にかき消された。

 

 

 

back  menu  next