「ああ、クラヴィス様の馬車のようですね」
リュミエールが安心したように声を漏らす。
ということは、ジュリアス以外揃ったということだ。
馬車から大儀そうに降り、クラヴィスが歩いてくる。
「クラヴィス様」
リュミエールが側に走り寄るのに目を留めながら、ぼそりと呟く。
「ジュリアスがいないようだが?」
それに呼応するかのように、女王専用馬車が到着した。
「さて、皆さんお揃い…あら?ジュリアスは…」
ロザリアが困惑して皆に訪ねるが、皆首を振る。
「ジュリアスったら、まだごねてるの〜?」
女王の言葉に、ロザリアが諌めるように振り返る。
変わらぬ言葉使いに一同苦笑する。
「陛下!そのような言葉遣いは、他の者に示しが…」
「いいじゃないの、皆知ってるんだから〜」
甘えるように言う女王に、皆昔を懐かしんだ。
「それにしても、そろそろ時間になってしまいますが…」
リュミエールが困惑に眉を下げ、クラヴィス以下皆を見る。
それぞれ、ジュリアスの私邸の方を見るが、馬車がやってくる気配はない。
「ああ、来たな…」
クラヴィスの言葉に皆が振り向くと、暫くして馬車の音が聞こえてきた。
「え〜クラヴィスったら!なんで分かんのよ〜」
オリヴィエの言葉に、ゼフェルも呼応して叫ぶ。
「地獄耳〜、こえ〜」
「ああ、ゼフェルはですね〜…」
又もやフォローしようとルヴァが口を開くが、その時馬車が静かに止まった。
近づいてきた馬車は、果たして光の館のものだった。
御者に開けられた扉から、銀の髪がさらりと零れる。
先に降り、そっと中に呼びかけるのは、光の館の執事リカルドであった。
リカルドに手を取られ、姿を見せるジュリアスに皆の視線が集中した。
「申し訳ありません、陛下」
そっと瞳を伏せ、女王に力なく謝る姿を見て、オスカーが慌てて駆け寄った。
「何かありましたか?」
火急の用に追われて遅れたのか、とオスカーが声をかけるが、ジュリアスの首が力なく振られる。一度も合わせられる事のない視線に、どうも調子が狂う。
いつでも自信に満ちた視線で、筆頭としての職務に勤しんでいたジュリアスにはありえない程の頼りなさが、オスカーを始め皆を戸惑わせている。
「ジュリアス様、こちらにお荷物全てございます」
リカルドの声に、すいと貌を上げる。その横顔を間近に見たオスカーは、透けるように白く寧ろ青ざめているような顔色に、視線を外せず凝視した。
何事かリカルドに言い含められている姿に、皆が互いに顔を見合わせる。
「ど〜しちゃったの?ジュリアスったら」
いつのまにか傍に来ていた、オリヴィエが声をかけてくる。
「何かあったのかと思ったんだが・・・」
私服に包まれたジュリアスの身体は想像以上に細く、普段乗馬姿を見慣れているオスカーでさえ、何とも儚げな様子に戸惑いを隠せない。
「それにしてもさ〜、リカルドって相変わらず綺麗よね〜。あ〜メイクした〜い」
オリヴィエの軽口のおかげで、なんとか皆の会話が始まった。
オスカーが視線を戻すと、リカルドが馬車の傍に佇み、ジュリアスの姿を見送っている所であった。
「私が最後だったのだな・・・」
オスカーの傍に戻ったジュリアスの声はやはり力なく小さい。
「いえ、でも、まだ出発の時間には間がありますし、」
「そうか、で?このあとはどうなっているのだ?」
ジュリアスは旅行に行くまでに執務に掛かりっきりで、結局全ての手配をしたのはオスカーだった。
「はい、シャトルに乗っていただきます。ただ、守護聖だと言うことは隠していますので従者は連れて行けません。お荷物は各自持って移動ということになってますが」
「え〜聞いてないわよ〜〜」
オリヴィエの叫びを無視して、続ける。
「観光惑星に行きますので、治安のほうは心配ないようです。現地の事はルヴァ様が以前視察でいらっしゃったそうですので、お任せしているのですが・・・」
オスカーに促されるように、ルヴァが話し始めた。
「あ〜前にですね〜ええっといつでしたっけ?ん〜」
またもや話が長くなりそうなルヴァに、ゼフェルがつっこむ。
「いつだっていいだろーが」
「ああ、そうですね〜ええっと、観光惑星『ジパング』はですね〜ここ数年でやっと他星との交信を始めたという稀少惑星でしてね〜、独自の文化が根付いていまして〜それはすばらしいものなのです〜。え〜たとえばですね〜・・・」
「ルヴァ、それは行ってからのお楽しみということで、宜しいのでは?」
ロザリアがやんわりと制する。
それを潮に皆シャトルへと向かった。