「では、私たちはここで」
ロザリアの言葉に皆頷く。
ここからは守護聖だけの行動となる。常ならばジュリアス号令の元、動くこととなるのだが、一向に声が掛からない。皆の視線が集まっていることには気づく様子も見せず、ジュリアスは何やらぼうっとしている。
仕方なくオスカーが代わりにシャトルに誘導し、無事出発となった。
「さ、ジュリアス様着きましたよ」
シャトルに乗り込んでからも、うわの空のジュリアスにさすがの年少組も調子を狂わされたようで、静かにしていた。
「どうしちゃったの〜ジュリアス」
オリヴィエの問いにも、曖昧に頷くばかりのジュリアスに、オスカーは手をしっかりと繋ぎ、誘導する。常ならば、このような庇護を甘んじて受けるなど、考えられないが、何故だかぼんやりとしたままのジュリアスは一向に拒む素振りも見せない。
「さあ、皆さん〜こちらがバスですよ〜」
ルヴァの声に年少組が我先にと駆け込んでいった。
オスカーが中に入り、見渡すとラウンドしたソファに三々五々座っている。二人がけの席ではなく、ソファ型の豪華な内装にこれからの行程もさほど負担にならないだろうとオスカーは安心した。
出来るだけ前のほうにジュリアスを座らせ、そっと顔を覗き込むが、表情は茫洋とし、今ひとつ意思が伝わらない。まるで、クラヴィス様のようだ、とオスカーがちらりと其方を見やった。
クラヴィスはいそいそと世話を焼くリュミエールをそのままに、何故かこちらを見ていた。オスカーが不審に思い見ると、僅かに視線が食い違う。どうもジュリアスを見ているようである。僅かに眉根が寄っているように見えるが、目の錯覚だろうか。クラヴィスがジュリアスを心配するなど、ありえないと分かってはいるが、真剣な表情にオスカーは何やら胸騒ぎがした。
「え〜とですね〜、今から温泉に行くんですよ〜」
ルヴァが今回の旅行の行程を説明し始める。
「え〜温泉っていうと、あの温泉!?」
オリヴィエの興奮した声にルヴァがやんわり笑って返す。
「あの温泉が、どの温泉かは分かりませんけども〜」
「美容にいいっていうお風呂のことでしょ!」
「あ〜そ〜です〜、温泉というのはですね〜色々効能というのがあってですね〜その土地土地でですね〜泉質というのが・・・」
延々と続く説明を要約すると、今回行く温泉はオリヴィエ絶賛の酸性の湯であるらしい。美肌効果があるらしく、今から鼻歌を歌っている。
一路その温泉に向けて出発した。
無事宿についた一行は、部屋に案内される前にオスカーから部屋割りを聞くこととなっていた。
「今から部屋割りを発表する。すべて籤によって決めさせてもらった。まず、ジュリアス様とルヴァ様、ゼフェルとオリヴィエ、リュミエールとマルセル、ランディと俺、クラヴィス様は一人になります」
「あ〜オスカー、今更なんですが〜私はですね〜コレがありますのでね〜一人部屋でないと困るのですよ〜」
ルヴァが頭のターバンを指差しニコニコと言う。そう言えば人前で外してはいけないと聞いていた、と皆が思い出す。
「ああ、では、私が代わろう・・・」
クラヴィスがそう言い、すっとジュリアスに歩み寄る。
「ジュリアス?私が同室だが、かまわぬな?」
クラヴィスの問いに、僅かに強張った表情を覗かせるが、小さく返す。
「・・・かまわぬ」
「ジュリアス様、大丈夫ですか?」
オスカーの言葉にクラヴィスが皮肉げに返す。
「私とジュリアスなら心配ない。少なくともオスカー、お前とよりは付き合いが長いのだからな・・・」
クラヴィスに促され、部屋へと向かうジュリアスは、緊張した横顔を覗かせていた。