「あ〜皆さん、コレが私のお勧めの一品<皿蕎麦>ですよ〜」
ルヴァの指し示す方向を見ると、給仕の女性が数人小皿を持って現れた。
すでに前菜に始まり、メインの陶板焼きで舌鼓を打ち、他にも数え切れないほど食べた一同はまだ料理が来ることに驚いた。
「ヌードルか?」
ゼフェルが訝しげに皿を持ち上げ眺める。皆、不思議そうに未知の料理を見つめる。
「ん〜匂いもあんまりないわね〜」
オリヴィエの言うのにつられて、ランディが鼻を寄せる。
「え〜、こちらの<徳利>に入っているツユをこの<蕎麦猪口>に注ぎまして〜こちらの<薬味>をですね〜、あ〜この<山葵>は辛いので、控えめにしてくださいね〜」
小型の壷を掲げて説明するルヴァを見つつ、自分の手元に同じ物を探す。見様見真似で恐々ツユを注ぎ、山葵やネギなどを加える。
「入りましたか?では、次に、この<皿蕎麦>を箸で適量を入れます。あ〜ここで入れ過ぎてはいけませんよ〜ツユが溢れて大変・・・あ〜〜〜」
ルヴァの説明を聞かずに、全量ぶち込んだゼフェルのテーブルは大惨事になっていた。
「わ〜ちょっと!ゼフェル〜〜」
隣のマルセルが慌てて飛びのく。
「きゃ!何なの??」
マルセルに体当たりされ、悲鳴を上げるオリヴィエ。
慌てて布巾を手にリュミエールが走りより、どうにか事態が収拾した。
「あ〜ええっと、気をつけてくださいよ〜ゼフェル〜。あ〜クラヴィスどうです、お味のほうは?」
気を取り直して、問い掛けるルヴァに黙々と箸を運んでいたクラヴィスは目線で頷く。
満足そうに頷き、視線を廻らすとオスカーに手を添えられやっとのことで箸を使っているジュリアスに目が止まる。蕎麦を一口食べ、オスカーに微笑んでいた。
満足げに視線をクラヴィスに戻すと、憮然とした表情で二人を睨んでいる。
どうしたものかと、ルヴァが首を傾げつつ考えていると、クラヴィスがそのままのそりと立ち上がり、座敷を出て行ってしまった。
「あ、クラヴィス様?」
慌ててリュミエールが追いかける。
騒いでいた年少組とオリヴィエも驚いて出口を見やる。
ジュリアスも腰を上げようと身じろぎをする。
「ジュリアス様!」
オスカーの声に驚いて振り返る。
「あ、いや、リュミエールが行ったので、心配ないかと・・・」
慌てて言い募るオスカーにジュリアスも再び腰を上げる気にはならなかった。確かに自分が行ったところで何も出来ようがない。一体何の為に後を追おうと思ったのか・・・。
程なくしてリュミエールが戻ってきた。
「クラヴィス様は何だか気分がお悪いらしく、先に休むそうです・・・」
皆に詰め寄られ、説明するリュミエールも、腑に落ちない様子で首を傾げている。
「あの、ジュリアス様」
リュミエールが振り返り、ジュリアスに声をかける。
「お部屋を替わっていただきたいのですが・・・」
クラヴィスの看病をしたいというリュミエールに、一体何と言えばよいのか。
ジュリアスは頷く他なかった。