リュミエールが目覚めて後、しばらく皆で詰めていたがジュリアスは一向に目覚めなかった。
一人減り二人減り、ついには部屋の主のクラヴィス、医師代わりのルヴァ、そしてオスカーのみが部屋に残る事となった。
「あ〜それにしても、どうした事でしょうね〜」
オスカーとクラヴィスがまったく口を開かない為、仕方なくルヴァが口を開くが、会話が続く筈もなくただ部屋の中に虚しく響く。
返事を期待していた訳ではないルヴァは、ただぼんやりと窓の外を眺めやる。もう幾許もなく日が暮れそうであった。
「クラヴィス〜ちょっといいですか?」
ルヴァが心持身を乗り出してクラヴィスに声を掛ける。
軽く視線で返事をするクラヴィスに、続けてルヴァが気がかりな様子で話し出す。
「あ〜そのですね〜日が翳ってきていると思うんですが〜、そろそろジュリアスをどうするか〜考えねばならないと思うんですが〜」
クラヴィスが思案気に目を細める。
「光の館か、若しくは・・・研究院か・・・」
クラヴィスの呟きに、ジュリアスの枕辺に詰めているオスカーが振り返る。
「だが、先ほど動かすのは危険だと!」
オスカーの心配も最もだが、まさかここで夜を明かすことも出来まい。
「ええ・・・ですが、ここにこのまま寝かせて置くわけにも行きませんし・・・やはり研究院でしょうかねぇ・・・」
三人がまたもや無言になる。窓の外はもう最後の日が落ちようとしていた。もう然して猶予がない。
「・・・・ん」
小さく声が漏れる。
「ジュリアス様!」
一番傍にいたオスカーが喜色を浮かべて叫ぶ。
「どうしたんです〜?」
ルヴァが慌てて駆け寄るのにオスカーが頷く。
無言でクラヴィスもすぐ傍に来ていた。
三人で上から息を飲んで覗きこむ。
ふるっと長い睫が震え、そのまま緩やかに開かれる。
「ジュリアス様!!」
オスカーが早く覚醒するように呼びかける。
その大声に僅かに身を引き、再び瞳を閉じようとするジュリアス。
ルヴァが慌てて、優しくと呼びかける。
「ジュリアス〜大丈夫ですよ〜起きてください〜」
その優しげな声に促されるように、またそっと瞳が開き始める。
「・・・・・・ル・・・ヴァ?」
かすれた声がそっと確かめるように名を綴る。
「そうです〜ルヴァですよ〜」
安心したようにクラヴィスとオスカーに視線を合わせるルヴァ。
ぼんやりと開いた蒼の瞳がやがて焦点が合ったようにはっきりとしてくる。
「ルヴァ・・・そなた・・・」
小さく首を振り何か言いよどんでいるジュリアスに、オスカーが声を掛ける。
「ジュリアス様!俺です!オスカーです!」
「ん・・・オス・・・カー?」
視線がルヴァからオスカーに移されるが、オスカーの背後から射す夕日が眩しくすぐに目を反らされてしまう。
ただ、意識は次第にはっきりしているようなので、ひとまずオスカーも安心したのか深追いはしなかった。
「・・・・・ジュリアス・・・」
最後にクラヴィスがひっそりと声を掛ける。
かなりはっきりとした視線がクラヴィスの紫の瞳を捕らえる。と同時に何故か眉が潜められる。
「クラ・・・ヴィス?そなたも・・・」
そう言ったきり考え込むようにジュリアスが眉間に皺を刻む。ちらとルヴァを伺い、ついでにオスカーも伺い、クラヴィスに視線を戻す。意を決したかのようにジュリアスが驚くべき言葉を紡ぎ出した。
「二人とも・・・・・・・老けたな・・・」