覚醒

 

「クラヴィス!」
 扉からぶつかるように駆け込んでくるルヴァに、ジュリアスから目を上げ振り返る。
「何か分かったのだな?」
 ルヴァの喜色を浮かべた表情にクラヴィスが念を押す。
「ええ、多分・・・ちょっとジュリアスを起こしてもらえますか?」
 ルヴァに促され、クラヴィスがジュリアの肩に手を添え揺さぶる。
 ジュリアスの眉根が苦しげに寄り、嫌がるように身を捩る。強制的に眠りへと誘われた身体はまだ覚醒するのは辛いらしい。
「・・・う・・・」
 軽く喉の奥で唸る。
「ジュリアス?」
 薄く開かれた紺碧の瞳はまだ焦点が合っていない。
「ん・・・クラ・・・ヴィス・・・」
 クラヴィスの方を見やりながらジュリアスが身を起こそうとする。慌ててクラヴィスの手が背に添えられる。
「あ〜ジュリアス〜ちょっと2,3質問させてくださいね〜」
 ルヴァが寝台の傍に腰を掛けつつ顔色を伺う。
 ぼんやりと肯定の意を示すジュリアス。
「え〜と、まず、此方の青年に見覚えは?」
 ルヴァが指し示す方向にオスカーが項垂れて座っている。
「確か、オスカーとか?よく分からぬが・・・」
 まるで知らない名前を呼ぶ声音に、オスカーの肩が目に見えて揺れる。クラヴィスの視線がオスカーを気遣うように向けられる。
「ええっと、私のことは分かりますね?」
 先ほどと何も事態が変わらぬことが確認でき、ルヴァは本を持つ手に力をこめる。
 もしかしたら、すっかり元に戻っているかもしれないなどと期待していた事に気づく。
「ああ、ルヴァ、クラヴィスも分かるが・・・」
 ジュリアスの困惑に顰められる眉に、不安と苛立ちが読み取れる。
「ええと、では、ちょっと待ってくださいね〜」
 どうぞ、と扉に向い声を掛けるルヴァにクラヴィスのみならず、オスカーまでもが顔を上げ不審そうな表情を隠さない。
「失礼します・・・」
 ルヴァの声と同時に扉が開かれ3人の少年が現れる。
「ジュリアス、この子達を知っていますか?」
 ルヴァの言葉に少年の内、一番気の強そうな少年が口を開く。
「何言ってんだ?」
 灰色のツンツン頭の少年がルヴァに食って掛かる姿が
、驚きに見開かれたジュリアスの瞳に映し出される。
 守護聖相手に何と無礼な、とは思うが、とりあえずジュリアスはルヴァの問いに答える。
「いや、皆目・・・何者だ?」
 最後の方は明らかに無礼な態度を責めるものだった。ルヴァがこんな時もジュリアスはジュリアスなのだと、薄く笑みを浮かべる。が、今はそんな表情は似つかわしくないと気を引き締める。
「な!何だよ?!」
 先ほどの少年が叫ぶ。後の二人も驚き顔を見合わせている。
「おい、ジュリアス何なんだ?趣味わりぃぜ?」
「ジュリアス様・・・」
「僕・・・」
 3人の声が重なり意味をなさない叫びになる。
 ジュリアスは混乱したように3人とルヴァを見比べる。
「ええと、じゃあ3人ともご苦労様です。詳しいことは後で説明しますからね〜あとの2人を呼んできてください」
 ルヴァのいつになく強気な態度に、さすがの3人も無言で退場する。ただ最初に叫んだ少年だけは燃えるような瞳で部屋の中を一瞥していった。
 ジュリアスはその怖いような紅い瞳に、何故だか自分が責められているように感じた。