覚醒

 

「ルヴァ?何よ」
 声とともに今度は金髪を赤く染めた、嫌に派手な身なりの青年と、水色の髪を持つ涼やかな青年が現れる。
「さて、ジュリアス。此方の2人は?」
 ルヴァに促され繁々と見るが、一向に見覚えがない。
 力なく首を振るジュリアスにルヴァが頷く。
「何のこと?ちょっとルヴァ、ジュリアス?何なのこれ」
 派手な青年がこれまた大げさに手を振りながら言う。
「あの、クラヴィス様?何かあったのですか?」
 水色の青年がジュリアスの向こう側に腰掛けるクラヴィスに声を掛ける。
 クラヴィスが困ったように僅かに表情を曇らせる。
「ルヴァ・・・」
 ジュリアスが途方に暮れたような、不安気な声で呼びかける。
「大丈夫ですよ、すぐに説明しますからね〜」
 ルヴァはそういいながら、さっきの少年3人を扉を開け中に入れる。

「ええとですね〜皆さんも薄々分かっているとは思いますが、ジュリアスは皆さんの事を忘れてしまっています」
 ルヴァの言葉に皆が息を飲む。
「ただ、私とクラヴィスの事は覚えています」
「え?それって、何なの?」
 オリヴィエが急き込んで問い質す。
「ああ〜ちょっと、待ってくださいね〜、オリヴィエ」
 オリヴィエをやんわりと牽制して、今度はジュリアスに向かい話し出す。
「ジュリアス?覚えてる限りでいいので、倒れる前のことを話してください」
 ルヴァに促され、ジュリアスは記憶を探る。
「・・・カティスが」
 意外な名前がジュリアスの口唇から零れる。
「カティス?!」
 またもやオリヴィエが声を上げるが、皆に視線で咎められ黙る。
「カティスが、私の生誕日の宴の為のワインを選べと言うので、ワイン蔵に行ったのだが、そこで、そこで・・・」
 ジュリアスが困惑気にルヴァを伺う。
「もういいですよ、ジュリアス」
 ルヴァがジュリアスを労わるように声をかける。
「ええっとですね〜私が考えるにですね、ジュリアスは5年前に記憶が戻ってしまってるんですね〜」
 ルヴァの説明に皆が首を捻る。
 クラヴィスが皆の困惑を見て言葉を継ぐ。
「5年前のちょうど今ごろだが、今回と同じように、ジュリアスが倒れたのだ。カティスのワイン蔵でな」
「そうなんですよ〜その時は半日程で目覚めて、特に何も支障はなかったのですが、今回の事で、ジュリアス記憶はその5年前に戻ってしまったんだと思うんですよ」
 そういいながらルヴァが手元の本を開き、活字に指を這わせる。
「あ〜っと、ありました。頭を強く打ちますとね〜脳細胞が損傷するんですが、表面上何も起こらない事があるんですね〜。それでですね〜随分経った後にまた衝撃を受けるとその損傷部分が問題を起こす事が稀にあるんですよ〜」
 信じられない話に皆戸惑いつつルヴァを見る。
「ジュリアスの場合は5年前には何事も起こりませんでしたけど、今回頭を打った事によって、この5年間の記憶がなくなってしまったんでしょうね〜」
「成る程な・・・だから私とルヴァしか分からないのだな・・・」
 クラヴィスの言葉に同意を示してルヴァが続ける。
「そうなんですよ〜ですので、オスカーは在位4年程ですね?後の皆さんも4年以下ですね?ですので、ジュリアスには全く未知の人間になる訳です」