騒然とした中、ただ一人取り乱さず成り行きを見守っている人物があった。何を隠そう、この騒動の原因たる闇の守護聖その人である。
「・・・・・・」
箱を抱きしめたまま俯くジュリアスを感慨深く見つめる。黄金の髪から覗く耳が驚くほど赤く染まっている。
「ちょっと!クラヴィス!!アンタ何贈ったのよ〜〜!!」
ジュリアスを眺めるのに忙しく、周りの喧騒をすっかり蚊帳の外に置いていたクラヴィスは、突然掴み掛かってきたオリヴィエに驚く。
「クラヴィス様!!何を贈られたんです!!」
続いてオスカーまでもが突進してきて、さすがのクラヴィスも堪え切れずもんどりうって三人で倒れこむ。
「クラヴィス様!」
リュミエールが悲鳴を上げる。
「いった〜い!もう!オスカー早くどきなさいよ〜〜」
オリヴィエの金切り声にオスカーが慌てて立ち上がる。続いてオリヴィエ、最後に憮然としたクラヴィスが起き上がる。
「大丈夫か?」
呆然としてジュリアスが呟く。皆の視線が一気に三人からジュリアスに注がれる。
「ああ、大事ないが、ジュリアス・・・お前その贈り物の意味が分かったのか?」
クラヴィスが問い掛けるのに、正気づいたのか慌てて胸に抱えた箱を抱きなおす。
「・・・・・・そなた本気なのか?」
ジュリアスが恐る恐る尋ねる。
「本気とは?」
クラヴィスの切り返しに、うろたえたように視線を泳がせる。
「冗談ではないのか?」
縋るように再び問い掛けるのに、ジュリアスが贈り物の意味を正確に把握しているのを感じ取る。クラヴィスは込み上げる笑いを勤めて抑え、至極真面目な表情で尋ねる。
「本気だと言ったらどうする?」
「・・・・・・困る・・・」
小さくポツリと呟き、胸の箱をきゅっと抱きしめる。
「困る?・・・嫌ではなく、困るだけか?」
ついに抑えきれず口元に僅かに笑いが滲む。
はっとして顔を上げるジュリアスに、安心させるように微笑みかける。
「ちょっとちょっとちょっと!」
二人だけの会話に突然オリヴィエが割り込んできた。
「何の事だかさっぱりわかんないんだけど?」
クラヴィスが周りを見回すと皆が頷いている。それに苦笑で答えるがオスカーに、じろりと睨まれる。
「ジュリアス様、何を贈られたんですか?」
オスカーの質問に、ジュリアスがびくりと震える。無意識なのか、箱が潰れるのも構わず力を入れ抱え込む。
「見たところ〜洋服か何かの箱に見えますね〜」
殺気立ったオスカーを抑えるようにルヴァが話し出す。
「何が入ってるんですかね〜差し支えなければ教えて下さいませんか?」
やんわりとした口調の割には鋭く質問する。
「あ・・・それは・・・」
困惑に眉根を寄せジュリアスがクラヴィスを見つめる。
「差支えがあるゆえ、教えられぬ」
ジュリアスの代わり答え、不敵に笑う闇の守護聖に、場が水を打ったかのように静かになった。
「へ、変な物ではないのだ・・・」
慌ててジュリアスが言い募る。
「でしたら、何なのか教えてくださっても!」
オスカーがジュリアスに詰め寄る。
「わ、私が貰った物なのだ、べ、別にそなたには関係なかろう・・・」
明らかにおかしな態度のジュリアスに、皆不審そうに目を向けるが、確かに他人には詮索する権利はない。
その後、宴は白けた空気を払拭できず、早々に終わってしまった。