幾重にも重なる天鵞絨が目に入る。そのまま視線を廻らすと、布の切れ間から僅かな灯りが洩れ込んでいた。
部屋には白檀の香りが立ち籠めている。
背中を柔らかな感触が包んでいる。
どうやら寝台に寝ているようだった。
ぼんやりと辺りを眺めていると、足を撫で摩る感触に初めて気が付いた。
驚いて身体が強張る。
「ジュリアス?気が付いたか?」
足元からの声に身を起すと、クラヴィスが床に膝付きこちらを見ている瞳に出会った。
「・・・・・・クラヴィス?」
「後少しだ、じっとしていろ」
その声と共に足を包み込むように、クラヴィスの手が這わされる。
「な・・・何なのだ?」
「裸足で歩き回るなど・・・傷が残ったらどうするのだ?」
慣れぬ手で包帯を巻く姿に唖然とする。
「何も・・・そなたが自らせずとも・・・」
ジュリアスは口籠りながら、言葉を継ぐ。
「では首座殿は、夜着一枚で、その上裸足で怪我をしている姿を見られたいと?」
ようやく手当てが済んだのか、名残惜しげに手を這わせつつクラヴィスがからかうように返す。
「そ!それは・・・困るが・・・その・・・」
いつまでも足を撫で摩られ、気恥ずかしい思いを隠せず頬が赤く紅潮してしまう。
「ん?どうした、ジュリアス?」
意地が悪い。
ジュリアスは火照った頬を枕に押し付け、貌を隠してしまう。
「そなたなど・・・しらぬ・・・」
両足に包帯を巻かれ、裾の汚れた夜着を纏ったジュリアスは、それでも尚光り輝くように美しかった。
クラヴィスは必死に貌を隠そうとしているジュリアスの姿に眼を細めた。
「ジュリアス・・・」
クラヴィスの重みに、寝台が僅かに傾ぐ。そのまま其方を見ると、意外に真剣な面持ちのクラヴィスがいた。
髪に触れる優しい手とは対照的にその紫の瞳は厳しい色を湛えていた。